● 読書日記4
・「自由と孤独を求めて 〜ある青年の生と死の記録〜」
1992年、アラスカの荒野で一人の青年の遺体が発見された。死因は“餓死”。青年の名前はクリストファー・J・マッカンドレス。ワシントン郊外の裕福な家庭で育ち、頭脳明晰で将来を嘱望されていた若者だった。しかし、彼は大学を卒業後、家族の前から忽然と姿を消し放浪の旅に出る―。
青年の謎に満ちた人生と死の真相に迫った感動のノンフィクション・ノベルで、映画『Into the Wild』の原作です。映画のあらすじを読んで興味を持ち、すぐさま本書を購読しました。著者の緻密な筆致にぐいぐい引き込まれます。読後は言い知れぬ深い感銘と衝撃を受けました。青年の生き様は少なからず共感できる部分があり、その壮絶な最期には胸が痛みます。青年の生い立ち、放浪生活、そしてアラスカでの過酷な生活と死までの様子が、彼に関わった人達の証言と著者の見解で語られています。とりわけ、死の影が濃くなる第2章と第18章などは泣けてきます。真相ついては憶測の域が出ないのですが、著者の綿密な取材による裏付けと見解は信憑性があり読み手を納得させるに充分だと思います。
今の時代、社会や家庭に自分の居場所を見つけられず、ストレスや窮屈さを感じている人は多いと思います。私自身も世間のしがらみや煩わしい事から解放され何処か遠くへ行きたいと思う事、しょっちゅうです。クリスもそんな一人であった訳ですが、違うのは彼は生来の冒険好きで常人には理解し難い思想の持ち主だったと言う事です。家族や文明や資本主義を否定し、社会から隔絶された世界で一人生き抜く事が、彼の美学であり自己への挑戦でもあったのでしょう。命の危険を顧みない冒険家の気持は正直理解しかねますが、今までの自分を捨て見知らぬ土地で生まれ変わりたいという衝動は分かります。映画のほうも、アカデミー賞こそ逃したものの傑作との呼び声高い作品に仕上がっているそうなので是非見てみたいです。
・「一気に読んでしまいました」
クラカワーの本はどれも読み応えがあるが、中でもこの本はお勧めできます。構成が非常にうまいです。作者がその存在を知ったときにはすでに荒野で餓死していた一人の若者の足跡を、本書は感情を抑えた筆致で丁寧に辿っていきます。その過程は、特に劇的な場面もないのに、スリリングで引き込まれます。
作者が言う、「死の淵の中をちょっと覗いてみたい」(本が今手元にないので正確な描写でないが)気持ちを一度でも持ったことがある人、結構いるのではないでしょうか?人によってはそれが危険地帯を放浪することだったり、台風の日に防波堤を見に行くことだったり、絶壁の下を覗き込むことだったり・・。でも、おそらく誰もその時、自分はただ見てみたい、経験してみたいだけで、本当に死ぬのだとは思っていなかったはずです。かつて作者もそのような若者であり、自分が今も生きていてこの若者が死んでしまった事実の間に、それほど大きな差はないのだ、と作者は自身の体験を挟み込みながら語っています。読んでいるとこの部分は唐突に挿入されているように感じますが、若者の不可解な死を、我々の想像の手の届く場所へ運ぶ役割を果たしていると思います。
・「品格を取り戻してくれた作者」
まず著者に讃辞を送りたい気持ちと、この本で亡くなった主人公の品格が取り戻されたことに喜びを感じました。
このような鋭敏で良心のあるジャーナリストがいたことに幸運を覚えます。
また、ニュースの中で日々伝達される一方的な情報とは異なった真実があることを改めて考えさせられました。
生きることの意味、人生を豊穣にするモノは何か、など、書物にある綺麗な言葉と裏腹に主人公が亡くなる直前に記した言葉に対し著者が推測した内容は大変感動し共感を覚えます。
亡くなった主人公のように大衆に対して少数な価値観を持つのは私自身そうでしたし、人と価値観が違って悩んでいる人、もし人生の意味や生きる意味を多少なりとも深く考えたことのある方にこの本はきっと何かしら伝えてくれるかもしれません。
私にとってはとても考えさせてくれた本でした。
・「リアルな自分探し…ではない」
この作品…読むタイミングを逃していましたずっと心のどこかに引っ掛かっていた作品です多くの人に読まれ…賛否両論あったこのノンフィクションが一体どういう風に自分の心に響くのか…
内容は一行で書けます
「恵まれた世界で育った青年が、何もかも捨てアメリカを2年間放浪し、アラスカで死んだという実話」
それだけです本当にそれだけなのですだからこの青年をナルシストや無謀な若僧と非難した人逆に彼は現代のヒーロだと賞賛した人さまざまなのです
しかしこのリアルな世界は妄想と違って人々の胸に深く刺さりますそう…みんな刺さったのです
その傷を「イタイイタイ」と叫ぶ人その傷を「生きた勲章だ」と思う人その傷を「何ともないよ」と感じる人
みんな感じ方が違います男性と女性でも感じ方は違うでしょうそれでいいのです
わたしが残念に思ったのは彼はこの旅でひとつだけミスをします自分では気付かないミスですあと少しだけの知識があれば彼はまだ旅を続けていたかもしれませんそうすれば、この本は自身の手で書かれ優秀なノンフィクションライターとして賞賛されていたでしょう
ひとつ言っておく事があるとすればよくある「自分探しの旅」ではないという事です彼は自分を分った上で自分のすべてを開き自分の居場所を求めに行ったのです最終的には自分を捨てる旅になってしまったのですが彼は満足だったと思います映画化になったこの作品、先に本を読んで正解でした
最後にわたしが一番心に残った一文を記しておきます彼が最期を迎える事になった荒野(アラスカ)へ踏み入る前の記述です
「半分しか入っていないバックパックの中身で 一番重いのは…本だった」
・「クリスは永遠の旅に出た」
ショーン・ペンが脚本・監督した新作「イン・トゥ・ザ・ワイルド」の評判が高いので、遅まきながら原作(実話)を読んでみた。
一人旅の果てに荒野に置き捨てられたバスの中で餓死したアメリカ人青年の、『青臭さ』と斬って捨ててしまうには余りに悲壮な生き方に時折読み進むのが辛くなる程の息苦しさを覚える。
死線を彷徨った冒険から生還した過去を持つ著者が、その一線を越えて向こう側の世界に行ってしまった主人公クリス・マッカンドレスに執拗な関心を持って取材を続け、次第に彼の半生と旅の軌跡、更には真の死因を浮かび上がらせていく。その過程で過去に荒野で消息を絶った人々のエピソードや登山家である著者自身の体験を織りまぜながら大自然の冷徹なまでの厳しさを淡々と描きつつ、同時にそうした厳しい自然に身を投じずには居られなくなった人々の共通項と重ね合わせながらクリスの内面に潜む精神世界に肉薄して行く。
クリスは精神的にどこまでも内省的であった分、それに抗うかの様に肉体的には外へ外へと向かって行くのだが、彼が踏み込んだこの果てのないラセン階段も、その肉体が滅びることで遂に終止符が打たれる。いや正確には肉体が滅びる直前、死を覚悟したときに彼はようやく平穏な気持ちで両親に心を開けるようになったのではないかと思われる。皮肉にも自らの生命と引き換える事によってしかその不安定で鋭敏な神経を支える事が出来なかったこの若者の、文字通り命を賭した心の葛藤を『甘え』の一言で済ませてしまって良いものだろうか。
読了後に何とも言えない重苦しさが体全体を覆うが、読んでおいても損はない。
・「過剰な理想主義と自己探求」
本書は、その焦点となる青年クリス(もしくはアレックス)にもたらされた結末、あるいは荒野におけるその不幸な試みとでもいうべきものだけについて書かれた物語にとどまりません。著者のクラカワーもその類にもれないでしょうが、社会からはみ出してしまう青年というものはいくらもいるもので、そのとまどいや矛盾、あらがいが抉り出されてゆくさまにこそ本書の価値を感じます。(たとえばお金に対する反発心とそれを必要としてしまう現実とのバランスが取れなかったりするわけです)若さゆえの理想主義が若者自身を蝕む様は、夢というものがもつもうひとつの側面をさらけ出してゆく姿をみるようでもあります。
・「退路を断った旅行者の結末」
2週間の休暇を利用してアラスカに行ったことがあります。期限付きで行くのであれば、帰りの飛行機のチケットなどを用意するなど計画どおりの旅行となるものです。いけるところまで行く、帰る時期はそのときに考え、また、少ない食料で原野に踏み入る、調査も入念でない旅行はそれに見合うリスクをはらんでいる。アラスカの自然に限らず自給自足の生活は食料を確保するだけに生活の時間を奪われる。それはキャンプで三食の食事をすべて作ろうとすることに似ている。2週間の旅でも30Kgの荷物を背負ってあるくのは若いときしかできないように、彼のような指向性を持ってアラスカの原野に旅立つのは20代しかできないであろう。少しは無理のできる体力と人生の荷物を何一つ背負っていないからこそ旅立つことができた。彼の結末は自分を試した結果であり、それは幸か不幸かアンラッキーな原因によってであろうが、それが反響を呼ぶのは彼の若さであり、若さを思い出すことのできない年配の人から見た驚きや同年代の若者に少なからず共感を与えるからではないか。しかし、客観的にみれば準備不足と退路を断った決断や認識の甘さや若者にありがちな無防備さが結果的に不幸な結末になっただけのことである。
・「聖域、発見の日々」
全米ベストセラー作品。餓死というセンセーショナルなニュースは全米を駆け巡った。裕福な家庭で高学歴を修め、将来を約束されていたのにアパートを引き払い名を忍ばせ、貯金を寄付し、財布の紙幣を燃やしてしまう。極寒のアラスカで自己を信じ自分を試す。自然界に精通する人々からは無知で無謀と批判的なメッセージを浴びるのだが彼のピュアな精神性はどんな理屈にも屈しない光を帯びる事となる。荒野に散りばめられた痕跡を辿って作者のリサーチがはじまる。次第に明らかになるクリスの足跡・・・この原作も映画もともにすばらしい仕上がり、読後クリスの言霊は私たちが永遠に引き継いでいくであろう。
・「彼はなぜ死んだのか?」
裕福な家庭に生まれ育ったひとりの青年が、放浪の旅の末アラスカの奥地で一人餓死する。彼がなぜ現代社会に背を向け、結果孤独に死んでいくことになったかを、彼と触れ合った人たちのインタビューや、残されたメモから少しずつ紐解いていく作品です。
主人公(クリス・マッカンドレン)不在のため、彼の心の奥を知ることは不可能です。そこで作者は旅の途中で彼が知り合った人たちや、両親、家族、友人のコメントから不在の存在を形作っていきます。さらに自分が彼と同じ年代で体験した感情をシンクロさせることで、主人公の極めて近いところまで意識を近づけていきます。中心がないが故に浮かび上がってくる一人の青年像を、多視線の構成で描いているのがこの作品の魅力だと思います。
また彼が死んだ本当の理由(ミス)が最後に明かされており、ミステリーの要素も持った作品です。
映画「In To The Wild」はまだ観ていませんが、ショーンペンがこの作品をどう映画化したのか非常に興味深いです。
・「アラスカの地へ」
実話に基づく話はとても興味が惹かれます。クリス・マッカンドレスはまだ若き青年であり、チャレンジ精神旺盛な若者であったことは言うまでもありませんが、私が驚いたのはクリスは本当に自由な場所を求めてアラスカの地へ辿り着いたにもかかわらず、日記にはアラスカの事よりもその日捕まえた食糧の事のほうが詳細に書かれていたことです。クリスと同様私たちも日々不本意な出来事に遭遇したり、人々の争い事に巻き込まれたりと煩わしさを感じることがありますが、もし万が一私がアラスカへ行って土地が与えてくれる食糧で生きていかなければいけないとしたら、喜怒哀楽を感じる前に毎日の食糧確保に一喜一憂する毎日を送っていると思います。アラスカでのクリスの日記の内容が、食糧の事が大半だったことに頷けます。
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