・「障害者が真に望んでいるのは、全人格的な結びつきですよ。」
エンゼルへのセレナーデこのような本が売れるのは、男女関係をすぐにセックスに結びつける現代世相「セックス第一主義」を反映しているのだろう。
障害者が真に希求するのは、精神と肉体の揃った全人格的な結びつき・つまり結婚の筈です。
障害者に対する誤解と偏見が助長されるのを恐れます。
ひるがえって、日本の身体障害者は種々の事情によって、一度も結婚できずに一生独身を余儀なくされています。彼らの多くは、一生異性の愛を知ることなく孤独死になるのだろうかという不安を持っています。
それでも、恋愛や結婚に対する夢や希望を持ち続けている人もいます。その辺の事情を知りたい人は、著者が小児麻痺だと想像される「エンゼルへのセレナーデ」をお読みください。
・「優等生のレポート」
受験バブル時代に神戸市外大の入試を突破した才媛が、障害者の性に踏み込んだところや、タイトルだけ見て、興味本位で本を読んでみた人も多数いるのではないでしょうか。本当に真面目な人なのだと思いますが、物足りなさを感じます。ベストセラーになったにも関わらず、結局ムーブメントも起きなかったのもそのせいでしょう。何か事情があって書けなかった部分を割愛したからではなく、これだけの力量だからこれだけしかかけなかった感は否めません。取材の機会には恵まれていたようなのでその点残念に感じました。
・「「障害者の性の介助」というテーマを通して、社会への問題提起をなす貴重な一冊」
医療・教育・福祉などの専門職でもなく、障害を抱えている当事者でもない著者が挑んだ「障害者の性の介助」に関するノンフィクションです。『週刊朝日』に連載された「週刊ノンフィクション劇場」をベースに更なる取材を重ねて、加筆後、単行本化されました。
ボランティアとして障害者とセックスをする女性、障害者専門の風俗店、身障者への出張を行うホストクラブ、知的障害者のカップルへのセックスの指導、福祉施設の介護者によるマスターベーションの介助など、これまで知り得なかった障害者を取り巻く性の現実が、障害を抱えているカップルや当事者への取材を通して明らかにされています。
私の娘は<点頭てんかん>という重い病を抱えて生まれてきました。「歩くこともしゃべることもままならないでしょう。」と告げられましたが、23歳になる娘は、知的な障害を抱えていても、演劇や水泳を続けながら、毎日元気に福祉作業所に通っています。 時おり、母親の私より充実した人生ではないかと思うことがありますが、性の問題になると娘がどのように感じているのか測り知れません。幼く無邪気なだけに、どのように感じているのだろうかと親のなす術もなく案じているばかりです。そんな現実を抱えているだけに、身につまされるような思いを味わいながら読み終えました。 「障害者だってやっぱり、恋愛したい。性欲もある。」という現実を当事者の生の声を通して知らされ、あまりの生々しい感情とそれに対する社会の風当たりの厳しさに、胸がつかえるような思いを抱きました。 この本を単行本化するにあたって作者が削ったであろう原稿の量を思います。ここに書かれていることは、その氷山の一角かもしれません。障害を抱えている娘の性というよりも、自分自身が日常生活レベルで無意識の領域に封じ込めている「性」に関して考えさせられました。そして、生は性という当たり前のことを再認識させられました。
この本を3つの点で評価したいと思います。 これまで表立って取り上げられたことのない「障害者の性の介助」というテーマに果敢に挑んでいる点、「性の介助」というテーマで、障害者の性の問題に切り込み、当事者でない一般の人々に分かりやすく訴えかけている点、そして、当事者への取材を重ね、障害者への性行為補助金制度を取り上げ、実際にオランダまで取材の足を運んでいるという点です。 評価すると同時に、この本は、障害者の性に対する問題提起に過ぎないということも感じました。性の問題は個人差もありますし、すっきりと解消するような解決策がないという側面を孕んでいます。単にセンセーショナルな問題提起の本として終わらないためにも、著者に更なる取材とテーマへの深い洞察を望みたいと思います。 取材を経て書かれた文章の行間に著者の心の置き所のあいまいさを感じてしまいました。著者に対して性体験の告白を望んでいる訳ではありません。性をテーマとする時、やはり自分がどんな性意識を抱えているのかという心の位置が定まっていないと問題に対する切り口が浅くなります。この本の物足りなさは、その点にあるのではないでしょうか。 人間が生物である限り、障害という問題は避けて通れないものではないでしょうか。傍観者的な立場に留まらず、自分自身の問題として「障害」や「性」について、著者である河合香織さんにも、この本の多くの読者の方々にも考えていただきたいと感じました。障害者の置かれている性の現状から、今後の社会のあり方を問うという方向までテーマを深化させてゆくことが次作への著者の課題ではないでしょうか。 障害者の性の介助を通して社会への問題提起をなす貴重な一冊としてお勧めします。
・「社会が覆い隠していることに目を向けさせる」
重度の身体障害者のセックス事情を取材したルポタージュ。変なセンチメンタリズムに訴えようとせず、取材内容と著者の素朴な感想を淡々とまとめた好感の持てる本である。命綱である酸素ボンベを一時的に外してソープランドに行く老人、ボランティアとしてセックスをする主婦、高福祉社会でのセックス補助事情、セックスのために積極的な活動に出る障害者、障害者専門のデリヘル、一歩間違えば過失致死罪に問われかねないリスクを犯して障害者の望みに応える介護関係者。頭の柔らかさや知的な誠実さを持ち合わせた人の大部分にとっては、非常に勉強になる刺激的な本といえるだろう。社会が覆い隠していることに目を向けさせるという面で素晴らしい内容である。
ただし、ルポタージュなので、政策案や学術調査のようなものを期待すると物足りない。著者に特別深い見識があるわけではなくって、調査に値する内容を実際に調査して脚色せずに伝えるというジャーナリストとしての尊敬に値する態度だけを頼りにして書かれた本である。また、題材からして、障害者や売春婦を軽蔑することを自尊心の拠り所にしているタイプの人にとっては我慢ならない内容だろう。
・「性の不自由に向き合って」
「障害者の性」というある種のタブーに切り込んだという意味で多くの衝撃を与えてくれる本書は、しかしそうした衝撃に尽くされぬ内容を孕んでいるように思う。
読み進めれば進めるほど、いわゆる「障害者」ならぬ人をも含んだ「性」の問題そのものが、焦点を結んでくる。ここに登場する誰もが、「これでいいんだ」と安心できるような答えを手に入れてはいない。そして誰もが、一地点に留まることを許されず、性の彷徨を重ねている。
問いは、本書に登場する著者や障害者、そうした人々を取り巻く人々だけでなく、読み手にも開かれている。どうにももどかしく、かといって諦め捨て去ってしまうわけにもいかぬ「性の不自由」に向き合って、私たちはどのように生きていけばいいのだろうか。
お手軽に安心できるような簡単な答えはない。だが、それでも向き合うしかない問いである。
・「心を生かすと書いて性」
個人的な問題で申し訳ないのですが自分自身あまり性欲が沸かなくなってきている状態で本を手にとってみました。障害は無いのですが。
これも申し訳ないのですが障害者で性欲があるというのはいったいどういうことだろうというよりは障害者でありながら性欲が旺盛であるその原動力は何なんだろうってできることなら参考にしたい助けを求める気持ちで読んでみました。
わかったのは障害があろうが無かろうがセックスをしたいという気持ちは生きるということの延長であってなんら特別なことではないということです。
これは持論ですが障害があるがゆえに生きることに貪欲で懸命なので自ずと性に関してアグレッシブになりうるのではないか?そういう風に感じました。
内容に関しては著者が取材対象に一定の距離を置いているので淡白に描写されてあると思います。押し付けがましくないやわらかい印象です。逆を言えば著者が是が非でも伝えたいという気概が伝わってこなかったのがちょっとエネルギー不足だと感じます。
・「興味本位で最初は手に取った本であるが、読んでいくと・・・。」
身近に障害者の方がいないのもあり、気付く事や知り得る事のなかった数々の事情や現実を『知っておく必要がある』のではないか‥という思いが強く残った一冊。こうした背景から学び取るべき事柄も多いので、色んな方々の目に触れてほしい一冊かも知れない。
・「難しい問題だ」
常識的に考えたら当たり前だが無いと思ってしまう障がい者の性の問題。
衝撃の連続です。
・「切り込んだからこそ見えた現実」
障害者の恋愛と性について正面から取材したルポルタージュ。
障害のない人にもありうる恋愛と性行為にまつわる葛藤と、バリアフリーや介助の問題が複雑に絡み合う現実。
実際に性の介助を行ったまたは行っている側(障害者専門の風俗嬢、ボランティアで介助する男女など)と、介助を受ける側両方のインタビューが興味深いです。
全く実態を知らなかった者として衝撃を受ける場面がいくつもありました。自分の知らなかった社会の現実を、考えさせられます。
・「もう少し掘り下げてほしい」
確かに扱うテーマがテーマだけに問題提起をしたということで大きな結果を残したでしょうが、結局「セックスボランティアというものがあります」ということが分かっただけで、それに伴う問題点や改善点などは全く書かれておらず「こういう現状がありますよ」という現状を報告された(読んだ)だけという印象になってしまいました。もう少し突っ込んだ(テーマ的に無理なのかもしれませんが)、内容が読みたかったです。
障害を持っている人だって普通にセックスもするでしょうし、オナニーもするでしょう。私自身は、そう考えていたので「では一体どうやって処理(言葉は悪いですが)するの?」という疑問はこの本で解消されました。なかなか障害者は射精等をするといっても、身体が不自由な分、大変なことだということもよく分かりました。
「障害者もこんなことしているんだ」「こんなこと考えているんだ」と考えることがそもそも差別的なのかもしれませんね。
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