・「リスクの考え方が変わります」
確率統計の側面から金融市場を語っている本です。投資について、確率統計が持ち出されるとき、ランダムな事象のほとんどの部分が一定の範囲に収まる、その内側を利用する話がほとんどです。分散投資をして、ボラティリティを小さくする話とか。この本でタレフが取り上げているのは、一定範囲の外のまれな事象についてです。このような事象を「黒い白鳥(black swan)」と呼ぶのですが、僕らは、この黒い白鳥を無視して物を考えがちです。でも、黒い白鳥はまれに(でもいつかきっと)やってきて、ものごとに決定的な影響を与えるのです。起こる可能性が高い事柄に思考を集中させる道具ではなく、まれにしか起こらないけれども影響の大きい事象に思いを寄せる、そんな思考法の転換に気づかせてくれた貴重な読書経験になりました。たぶん、読者のほとんどが投資に興味がある人なのだろうけど、投資の話はあくまで説明のための事例に過ぎなくて、もっと一般的な日々の暮らし、人生に影響を与える種類の本です。その意味で、「投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」という副題が読者を限定してしまっていてもったいない気がします。
・「運がいいとか、悪いとか」
人は、投資に成功した時は、「自分は実力を発揮した」と思いがち。また、失敗した時は、「自分は運が悪かったんだ」と思いがち。
タレブは、貴方たちは、そもそも「運」と「実力」の違いがわかっているのかと問いかける。
投資における、偶発性の意味を考察し、「運」と「実力」の違いを明らかにした後、生物学、物理学、哲学、文学、その他あらゆるジャンルに、ランダムに触手をのばし人を笑わせる。
しかし、タレブの話を聞いているうちに、いつのまにか、自分の過去を振り返り、色々な事を思い出し、あれは運だったのか、何だったのかと感慨に耽ってしまう。不思議な魅力を持った本だと思う。
(ご参考)一括注文のペアとなっている、イアン・エアーズの「その数学が戦略を決める」はコンピューターによる大量のデータ処理により、統計学の推定が専門家を超えたと言う。一方、ナシーム・タレブの「まぐれ」は人生は一回しかないので、確率論からは母集団が少なすぎ、偶発的なものが成功を左右すると言う。
一見、正反対のことを言っているかに思われるが、実は矛盾はしない。両者共に面白い。脱帽。
・「思考力が高まる良書」
自分は上記の2人のような文章力・語彙がないので恐縮ですが、とにかく広い視野を持つことができるようになる、良い本だと思います。ランダム性・バイアスについての理解が深まる。著者は「金持ち父さん・貧乏父さん」の本を批判してる。金持ち父さんのサンプルが偏りすぎだと。確かに金持ち父さんと同じライフスタイルでも運が悪くて大損する例もあるだろう。ただ、長期投資で儲けることを全否定してるわけではなく、50%は運が支配してると言いたいのだと思う。社会人なら一度は読むべき本。
・「言葉がわかりにくいが独自の視点は興味深い」
独特の用語や言い回しが多く、翻訳物であることもあって、本書の内容のすべてを正確に理解することは難しかった。が、本書の視点には独自のものがあり、自分自身、常々、投資においては「まぐれ」(あるいは「幸運」「たまたま」)の要素が非常に大きいと感じていたので、共感するところは多かった。 確率論や生存者バイアスや期待値、後知恵などの点については、あらためて納得する点が多かった。未だに世にあふれる「○億儲けた」系書籍のアホくささをあらためて感じた。また、多くのテクニカル分析についてのコメントも同様にほとんど意味がないものだろう。 多くの個人投資家に必要なのは、通常考え得るいかなる事態(黒い白鳥が現れる事態)になっても破綻するようなことのないスタンスを持ち、訪れるかどうかはわからないが、いい意味での「まぐれ」をうまく生かせるよう、あるいは「まぐれ」に恵まれる前提条件を整えておくような運用を継続していくことではないか。
・「超刺激的で難しい本」
投資に関するなんの「具体的な手法」も書かれていない本ですが 投資本としても、十分にいい本だと思います。 ランダムウォーク系の本は結局、分散投資やインデックス投資 アセットアロケーション といった 「理に走って儲からない」系の本が多いですが、 この本は同じランダム理論を展開しながら、 能書きを垂れる人、成功したと語る人はみんな「運がいいだけのバカ」とこきおろしている点に共感がもてます。 ドイツの哲学者ポパーを引用しながら、 「この世には絶対的な真理(成功法)などない。あるのは まだ『間違っていなだけ』の暫定的な仮説だけ」という 虚無的な帰納法の論理こそ、投資ではとても役立つ考え方と思いました。 金言「何をするにしても、世界の見方に関するなんらかの理論にもとづいて賭けをしていることになる。でもそのとき、こんな条件を自分でつけるのだ:どんな稀な事象が起きても、そのことでひどい目に合わない形にすること」(P164)
・「長い目で見ましょう」
昨今の金融技術の発展は、さまざまなリスク管理手法を生み出した。いわゆるクオンツたちだ。クオンツは、市場の「過去の」パフォーマンスを厳密に分析し、将来のリスクをヘッジしようとする。しかし、それが将来にあてはまるとなぜ言えるのだろうか?筆者は過去のデータに過度に依存するそういった戦略を批判する。
<…市場と(人生)は、勝った負けたの単純な世界ではない。負けたときの損失の大きさと勝ったときの収益の大きさは、まったく違っていることがある。戦略の結果に歪みがあるとき、つまり、損をする確率は小さいが実現すれば大きな損が出る一方、儲かる確率は大きいが実現しても利益は小さいとき、ゲームに勝つ確率を最大化しても、ゲームで得られるものの期待値は最大化されない。低い確率で大きな損失が発生し、高い確率で小さな利益が出る。>(p.155)
今「勝っている」ように見える市場参加者も、それは数年単位の「まぐれ」あって、彼らのモデルで予測できない(しかし起こる)事象に吹き飛ばされるのを待っているだけなのかもしれない。というか、タレブによれば「勝ち組」のほとんどはまぐれによるものだ。情報とノイズをみんな勘違いしている。サブプライムは、損をするはずのない商品だったらしい。今はそれでみんな吹き飛んでいる。
しかし、勘違いしてはいけないのは、タレブが批判しているのはリスク管理手法のことではなく、それを常に過信する人間たちのことである。タレブの知る限り、長期にわたり生き残っているトレーダーはみんな「どうなったら自分の仮説が間違っているかをはっきりさせている」そうだ。みなさん、自分の説が好きみたいで、それで失敗するんだって。尻が痒い。耳が痛い。
・「確率論からポストモダンまで幅広い領域を網羅している」
まず著者の株式投資法は「市場には稀な事象を逆手に取るトレーダーがいて、ボラティリティは良いニュースである。小さな損失はよく出すけど、滅多に儲けないけどビッグチャンスがくれば大儲けする」数理系のトレーダーです。
本書は投資法そのものよりも、むしろ一般的なトレーダー、ファンドマネージャーが如何にして間違った手法を用いているかを確率的手法を示しています。著者の得意のモンテカルロ・エンジンを使い、様々な経路をシュミレートして現在の状況はその中の唯1つの可能性に過ぎないと解説しています。
ここから大金持ち(ビル・ゲイツなど)はたまたまその可能性の1つがうまくいったに過ぎない。オーディションに通った俳優も少し状況が変わったならば、カフェでバイトを引き続き行なっていたかもしれないというまさにパラレルワールド的な内容を確率論を用いて表現しています。
また著者はポストモダニズムへ継投しているためかやたら哲学から前衛芸術に精通しています。本全体にエッセイ風にその博識を散りばめています。
巻末の参考文献は必読書の集合です!実は本の内容以上にこの参考文献は役立ちまして、私の読んだ限りでは脳科学、確率論、ネットワーク理論など珠玉の名著が並んでいます。孫引きに使うには持って来いの作品群です。
・「偶然に騙される」
最近(09年6月現在)、ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質の翻訳が出て話題のタレブの本。
本書で言いたいことを一言でいえば
「人は、偶然による結果を、何か隠れた原因によるものだと考えて、それに引きずられてしまう」
ということになるだろう。
心理学なども交えながら、偶然のふるまいが引き起こすいろいろなことを面白く紹介している。
もうひとつ本書で重要なのが
「人は、めったに起きないようなことは過小評価する」
という点であり、これは『ブラック・スワン』でより深く考察されるだろう。
本書はきわめて軽く書かれているので読みやすいが、逆に見ると筋が見えにくく散漫な印象もある。とはいえ偶然のいたずらという話は経済のみならず身近な問題でもあり、非常に面白い。
・「金融版「無知の知」のススメ」
我々の感情が、どれほどリスクや損失への認知や判断を歪めるか、心理学(行動ファイナンス)や統計学を踏まえて語られます。人間である以上、間違いは免れない(だからストップロス等のポジション管理は先にしておくべき)。また、現実の世界は正規分布でとらえられるほど素直でない(サンプルの問題などで)、と。
著者の古典と哲学の教養ゆえに私には多少読みにくい部分もありましたが、「MBAほど吹き飛びやすい」「LTCMの失敗は、彼らノーベル賞学者たちが自分の喋っている問題を全く理解していないか、宇宙の歴史数回分に一回の事象であったかのどちらかだ」などおもしろい話が多数。ジム・ロジャース(批判される方)やジョージ・ソロス(賞賛される方)なども出てきて飽きさせません。
本質は、誠実で健全な科学の本だと思います。一方で、株や為替をトレードする上で示唆になる面もあり(第5章に悪い例掲載)、実務・実戦への適用もしやすい内容です。
副作用として「どうせ偶然が物事を支配するのなら・・」と虚無感に襲われるかもしれません。私はそれを株式投資の新しい考え方―行動ファイナンスを超えてで中和しました。
・「過信が導く失敗」
書中のソロンの言葉、「終わるまでは終わりではない」がとても印象的。今、成功しているからといってそれが永遠に続くとは思わないこと、過去の成功を自分の力と過信してしまうことが、大きな失敗につながる。よく投資をする際にも「自分は特別で損はしない」「これまでの成功をパターン化して実行すれば安心」という精神状態に陥りやすいが、改めて投資の難しさを痛感させられる一冊。具体例が多く、わかりやすい。
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